ええ~、毎度おなじみチリ紙交換です…
僕は21か22歳の頃、チリ紙交換の仕事をしていました…。
初めてのバンドを一ヶ月でクビになった私は路頭に迷いました。
盛大に送別会をしてくれた喫茶店「華」に戻ることもできないし…。
何をして生活費を稼ごうか…。
あ、そうだ! 家の前にチリ紙交換の会社があった!
そこへ行ってみよう。
その頃私は杉並区の荻窪に住んでいました。
21歳半ばの頃でした。
「ええ~ 毎度おなじみチリ紙交換でございます、古新聞、古雑誌、等ございましたら チリ紙と交換いたします。ええ~~ 毎度おなじみチリ紙交換でございます…」
35, 6年前は、小さめのトラックにつけたスピーカーから流れるこういった謳い文句を、住宅街のアチコチで聞くことができました。そんな時代でした。
ある日の朝起きて、意を決してチリ紙交換会社を訪ねました。
「あの~~、働きたいのですが…」
「あの~ 働きたいのですが…」
先方の会社の人は、一言、ぶっきらぼうに 「免許証アリマスカ?!」 と面倒くさそうに言いました。
僕は生活がかかっているので、にっこり笑いながら、
「ハイ、あります!」
大学1年の冬休みに北海道で免許を取っていました。
それがこんなところで役に立つとは…と内心思いました。
会社の人は続けて 「じゃあ、今日は、先輩の人について、1日見習いをして下さい」 というようなことを言いました。
ちり紙交換のシステムと言うのは、先ず 会社から小さな(500kg積載量)トラック を1日レンタルします。
そして、ちり紙とかトイレットペーパー等を会社から買います。 いくらだったかもう忘れましたが…。
そして、新聞とか雑誌、上紙(じょうがみ)を集めてきて、それぞれ1キロいくら という値段で会社に買い上げてもらうのです。 その差額が1日の収入になります。
チリ紙交換が最初に始められた頃は、新聞紙1キロ=40円くらいだったそうです。
安そうに思われますが、40円と言う値段は大変な値段なんです。
何故なら、普通に集めれば、1日1000キロはすぐ集まりますから…。
そんなわけで、今日一日見習いに付いていく先輩を紹介されました…。
「こんにちは…宜しくお願いします……」
その先輩は、「サー 行こうか」と言って、トラックのほうへ歩いていきました。僕も、遅れないように付いていって、車に乗り込みました。先輩は慣れた手つきで車を運転をしています、そして、いろいろ優しく聞いてきました。
「年はいくつ?」 "はい 21です" 「なにやってんの?」 "ギターを習っています" 「ほう! スゴイネ、プロになるの?」 "はい!…"
そうこうしている内に、先輩は車を止めて新聞紙を集めてきました。新聞紙の束の縛り 方を教わったり、積み込み方など教わりました。今となっては、すっかり忘れてしまったみたいですが…。
又、車に乗り込み、スタートしました。
「ギターはクラシック? ロック?」 と聞いてきました。きっと硬くなっていた僕に気を使って、色々話しかけてくれたのだと思います。
"いえ、ジャズです" と答えたものの 内心では、ジャズは全然教わってないんだよなー と少し複雑な思いでした。おもいにふけっているうち、あっという間に数時間たっていたみたいで 「メシにしようか?」 先輩が優しく言いました。"はい"
先輩におごってもらいました。(優しい人でよかった…)
あっという間に1日が終わり会社に戻って、集めてきた新聞、雑誌、紙 等の重さを計測します。そして新聞紙を60kg位ずつの束にします。
それらの細かいこと等、先輩は丁寧に教えてくれました。 それなのに、その先輩の名前も顔も覚えていないなんて……若い時の自分は…キライです。
(続く)