和解・11

毎週のように 日曜日 オーバードで 僕とマコ 先輩と奥さんのTちゃん 4人で 録音していました。

僕とマコは スタジオのようにセッティングされたマイクの前に座り 先輩は カウンターの端の

コンピューターの前に座り、Tちゃんは その中間くらいに位置し 中継の役をしていました。

「はい、行きます!」「3、2、ー  」・・・・と息詰まるような録音が始まります。

 

テンダリーズ二人の場合は 大部分、僕は伴奏に回ることが多いので 意外と気楽です。

よし!いいぞ!このまま マコ 頑張れ!

と、調子よく進んでいきます。

 

りん り~~~~ん りん り~~~~ん     ・・・・・・・   電話です。

張り詰めた室内の空気が一変します。

 

先輩たちが無言で 電話の回路を外しに行きます。

 

「さぁ またやろうか!」

「はい、じゃ行きましょう」

 

TAKE2 が始まります。

今度は順調に1曲録り終えました。

「さあ プレイバックして聴いてみよう!」

4人がコンピュータの前に 嬉しそうに集まります。

先輩がプレイバックのスタートボタンを押し間違えて、今の録音が消えてしまいました。

 

先輩「あれ、おかしいな、あれ?あれ?・・・」

 

マコが優しく言いました。

「もう一回やりましょ」

 

さあ気を取り直してTAKE3です。

 

録り終えてまたコンピュータの前に4人が集まります。

Tちゃんが、「バンマス~頼みますよ!」

 

先輩はオーバードの中では、バンマスと呼ばれているようでした。

お店の中で まさか おとーさんとか あなたとか 呼ぶわけにもいかないでしょうから、

長年の間に 自然に バンマスと呼ぶようになったのだろうなぁと微笑ましく感じたものでした。

 

僕たちも 「バンマス~ 今度はたのみますよぅ!」と言って 

その場の空気を明るいものにしようと努めました。

 

プレイバックが始まりました。

いい感じで録音されてます。「いいぞ~~~いいぞ~~~いいぞ~~~~」

途中まで来て Tちゃんが 「この音なに?・・・・・」

 

注意深く 聴いてみると 確かに 低周波のような音が聞こえます。

演奏している時は 全然気が付かなかったのに・・・・・・・

なんの音だろう?

 

 

続く